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そんなことより、俺たちを救ってくれ

日米の選挙が終わった。日本では与党自民党議席を減らし、アメリカでは共和党のトランプ前大統領が圧勝した。ある新聞では、日米の選挙を比較し、日本で自民・公明の与党が負けたのは、まだそこに道徳的な価値が機能しているからだと説いた。

日本は10月27日投開票の衆院選で自民、公明両党の与党は15年ぶりに過半数を割った。旧安倍派の議員を中心とする政治資金の不記載問題への反発が原因だ。衆院選は「明日のパンではなく、道徳的な価値」が争点になった。

 

2024年11月5日 日経新聞朝刊

国際報道センター長 吉野直也氏執筆

www.nikkei.com

 

この記事では、アメリカの民主主義を童謡「歌を忘れたカナリア」に例え論じている。アメリカにとっての歌は、民主主義と倫理だ。

「悪口は慎みなさい」「嘘を言ってはいけません」。大人が子供に教えてきた道徳的な価値と、トランプ氏の発言は相反する。道徳的な価値は民主主義を支える根幹だ。トランプ氏の誹謗中傷や嘘に鈍感になるのは、信じてきた道徳的な価値の倒錯を受け入れることになる。社会はやがて規律と秩序を失い、混乱を深める

アメリカが、根幹だった道徳的な価値を捨ててまで、トランプを選んだのはどうしてなのだろうか。それは自らの日常生活――『明日のパン』のためだと、記事では説く。

アメリカの多数派は、日常を維持することが難しいほど、経済的に困窮している。富裕層と貧困層の経済的格差は広がり続けている。米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス、著名な投資家ウォーレン・バフェット、米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ、この三人の個人産の合計は、アメリカの下位50%の人の総資産に匹敵する。アメリカ人の半分の合計分と同じ富をこの三人が独占している。

米国の平均的な従業員と最高経営責任者(CEO)の収入格差は196倍、米国の大卒者の年収の平均が約8万ドルなのに対して、高卒者は約5万ドル、この学歴による収入格差は1973年と比べて広がっている。持っている人と持っていない人の格差は広がり続けている。格差の下の側に居る人たちは、明日のパンを与えてくれるであろう候補者を求める。

 

◆バカバカしいほどのアイデンティティーへのこだわり

ドナルド・トランプが訴えていることは、不法移民の強制送還や、海外製品への関税、自国と自国民の経済を最優先した政策だ。それは米国の民主党が訴えた他国との共存と、マイノリティの尊重とは相反する。多くのリベラルな政治思想を持つ人たちは、なぜ排他的なトランプの政策支持するのかと、疑う。トランプは問題ある言動も多く、刑事訴追もされている。そんな人をなぜ? 実際、大統領選後のSNSでは落胆と疑問の声が溢れた。それに対する回答のような文面が別の日の新聞記事に載っていた。

 

トランプ氏が訴えていたものを十分な数の米国民が望んでいるということだ。不法移民の大規模な強制送還やグローバル化に終止符を打つこと。そしてリベラル派エリートらのバカバカしいほどのアイデンティティーへのこだわり(これは「Wo kense=ウォークネス」という言葉で知られる)への反発と言った要素が、トランプ氏の人格に有権者が抱いていた疑念よりも重視されたということだ。

 

2024年11月5日 日経新聞朝刊

USナショナル・エディター エドワード・ルース氏執筆

 

www.nikkei.com

 

リベラルな政治思想の人たちは言う。軍備を強化して戦争に向かうのはいけない。ヘイトススピーチで外国籍の人を差別するのはいけない。性的マイノリティを排除するのはいけない。いけない、いけない、いけない。たくさんのいけない、を明日のパンすら危うい人たちは「バカバカしいほどのアイデンティティー」と嘲笑う。そんなことより、俺たちを救ってくれ。助けてくれ。彼らは怒り、トランプ氏に一票を入れる。

日本は辛うじて、倫理や道徳を保っていると、先ほど紹介した記事にはあった。与党は議席を減らし、比較的リベラルな立憲民主党議席を増やした。しかし、これは一時的だと私は思う。与党にトランプほどの魅力が無かっただけだ。実際、国民民主党、参政党、日本保守党といった保守に寄った政党も議席を伸ばした。

今回の衆院選で、道徳的な価値に向かわせたように見えるけれど、これは単に、自民党公明党では、明日のパンを得られないと思わせた。それだけだろう。マシだと思ったのが野党だった。日本の多数派の人たちが、リベラルな政治思想になったわけではない。だからきっと、立憲民主を初めとする野党が、明日のパンを蔑ろにする行動を続けていれば支持率は下がる。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

 

◆リベラル層のうっすらとした差別意識

保守的な政党を支持するからといって、大半の国民は、戦争をしたいとも、ヘイトスピーチをして、外国籍の人を差別したいとも思ってない。女性や性的マイノリティを差別したいとも思ってない。ただ、そんな問題を解消するよりも前に生活を豊かにしたいと思っているだけだ。

以前ブログに書いたけれど、私の弟は工場で製造の仕事をしている。私は大学まで行ったけれど、彼は高校しかでてない。私よりずっと安い給料で働いている。彼の同僚には、外国籍の人もいるようだ。外国籍といっても、大学に留学にくるようなエリートの外国人ではない。日本語が不自由なまま日本に来て、なんとか仕事をしている。出稼ぎ労働者とでも言うのだろうか。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

専門的な特技や高度な知識があるわけではない、日本の工場に勤める日本人労働者――私の弟のような立場の日本人が、外国人の労働者に対して、仕事を奪うかもしれないと、思ってしまう感情を私は想像できる。外国籍の人々が安い給料でも働くなら、自分の給料も下がるかもしれないと、心配する気持ちも想像できる。そこから、排他的な気持ちが生まれることも想像できる。

リベラルな政党・政治家に足りないのは、彼らの不安や恐怖を想像する力だ。想像力が欠如している。立憲民主、共産、社民からの推薦を受け都知事選に出馬した蓮舫氏はコロナ禍に、持続型給付金の対象に学生も入れるように要望した際「学校を辞めたら高卒になる。就職どうなるのか。奨学金を返せない」と発言した。

www.asahi.com

 

高卒になったら、就職ができない、奨学金を返せないほどの収入しか得られない。高卒になったらおしまいだ。この発言を彼女は謝罪したけれど、うっすらとした排除や差別がリベラルの人たちの間に漂っているように私は感じる。リベラルな主張をする人たちの周りには、大学受験をせず、高卒で工場やサービス業で働いているような家族や友人は、いるのだろうか。きっと少ないだろう。だから、想像ができない。彼らにとって、高卒の自民党支持者はまわりにいないけれど、外国籍の留学生や性的マイノリティを公言する友人は身近にいる。だから、想像できる、助けようと言える。

今回の選挙で、私は与党に投票しなかった。野党に、とくに、リベラルを自称する政党に入れた。でも、それは今の彼らを支持するからではない。この支持の集まっている、力を持った状況で、リベラルな政党に変わって欲しいと思っているからだ。明日のパンすら危うい人たちを救う政治を行ってほしい欲しいと思っているからだ。もし、日本の格差がさらに広がり、トランプ氏のような主張をするような人が現れたら、きっとすぐに支持が集まってしまうだろう。その前にちゃんと、想像力をもって、救うべき人を救って欲しい。