ちょっとまえにブロガーのイケダハヤトさんが、電話営業・訪問営業を批判したブログを投稿しました。
今の時代、効率よく引き合いを得る方法はいくらでもあるわけです。
電話とか訪問なんてのは、インターネット以前の文化なんですよ。
押し売りしないと売れないとか、その時点でいろいろ終わってますからねぇ。
実際、詐欺的な商品なんじゃないですか?
いいものであれば、無節操な営業なんてする必要ないんで。
いいものであれば、無節操な営業なんてする必要ない――商品の品質がよければ売れるという、意見には同意できます。ユーザーに支持される商品は売れる。しかし、多くの商品は、”良い物だからだけ”では売れない。適切な顧客へのアプローチがなければ、手に取ってもらいにくでしょう。
◆無作為の電話営業は効率的ではない
たしかに、見込み顧客かどうかを問わず、無作為に電話営業するのは、イケダさんのいうように非効率でしょう。「買うかもしれない顧客」に絞ったほうが良い。オナホールをトイザらスに営業しても意味はない、だけど、大人のおもちゃ屋に営業するなら意味はある。だから、イケダさんの紹介していた記事のように、無作為に不動産投資の営業をするのは効率的ではないと思います。しかし、だからといっても、電話・訪問営業すべて意味がないというのは極論です。
◆営業は宣伝活動でもある
単純に、具体的にほしい商品が分かっている人に物を売ることだけ考えるなら、ネット通販で十分だと私も思います。しかし、「この商品のここが不満だな」「こんな商品あったらいいな」と漠然と思っている、潜在的な需要のあるユーザーを見つけ、掘り起こすことはできません。言葉にできないニーズのある人に、こちらからアプローチして、商品を知ってもらうという「宣伝活動」も営業はかねているよう思います。
◆情報収集も営業の業務
私は、商品を断られたとき、必ず「買わなかった理由」を聞きます。商品や価格、もしくは販売方法、どれに不満があるのかの意見をもらえます。そこの情報は、金銭的な利益にはなりませんが、会社としては大きな利益になる。それをもとに、商品を改良できる。「今月は決算で予算がない」とか「他のメーカーの似た商品を買った」といった顧客側の理由だったとしても競合や顧客の研究になります。その意見をとれないというのは企業にとっての欠損であるように思います。
ネット通販のレビューを見れば使った人の意見は聞けます。しかし、買わなかった理由は分かりません。宣伝方法?値段?商品内容?どれに不満があって買わなかったかは、耳に入りにくい。「オタクの商品ここがよくないので買わなかったですよ」とわざわざメールしてくるほど時間のある顧客はなかなかいないでしょう。しかも、レビューというのは、褒める意見でも、批判的な意見でも、相当強い思い入れがなければ書かない。声にならないけど、ちょっと買うのを躊躇するな、という程度の欠点は会社の目には届きません。
そういえば、私がこの会社に入りたての頃、某競合他社の営業さんが、情報を仕入れられない営業は無力って、言っていました。
◆これからは無作為な電話営業にも勝算がある
また、さきほど、イケダさんが紹介したような無作為な営業手法は非効率だと言いましたが、それだって、まったく無駄な仕事ではない。むしろ、これからの時代には勝算があるかもしれない。
「イケハヤは電話営業・訪問営業を否定してるけど、あいつは無知だ。あれは有効だ」というおっさんの意見が来るんだけど、そもそも論点がズレてるんですよね。
— ikehaya | Blockchain (@IHayato) 2018年4月27日
そりゃ儲かるよw 社会に迷惑掛けて、労働者を使い潰してるんだから。ブラック企業が儲かる論理と一緒。
イケダさんのような意見を持つビジネスマンが増えれば増えるほど、電話営業・訪問営業を頼りに購買活動をしていた人は取り残される。営業マンがこなくなるんだから。顧客がインターネットで自ら情報を見つけることができないとしたら、非効率だとしても、電話や訪問でのアプローチ手法として有効です。イケハヤさんのように、電話営業オワコンという人が増えれば増えるほど、競合他社は少なくなるので、今、古い手法の営業は生きてくる。パイは少なかったとしても競合がいないので、受注しやすくなります。
少ないニーズであっても、確実に需要のある分野です。小さなニーズを見落とさないことがこれからは重要です。
◆ゴワゴワする会社であっても、無駄ではない
個人的な意見ですが、記事の中の女性が働いていた会社に不快感は覚えます。
「母子家庭だよね? お母さんが泣くよ? 続ければやりがいも出てくるんじゃないかな。会社を辞めてどうするの?」
「自分でなんとかします。海外でワーキングホリデーに興味があるんです」
「玉田さんみたいな、これといった能力も持っていない人が海外に行っても日本にいるのと変わらないよ」
これが事実なら嫌な会社だなと思う。仕事なんて合う、合わないがあるから、職種が変わるだけで大活躍することはある。能力があるかないかは、数日一緒に仕事した人が分かるわけないよな。私自身、ライター時代は仕事つまらなかったけど、営業になってからは楽しいし、できることも増えている。だから、仕事が合わないなら、すぐ変えたほうが良いというのは同意する。記事の女性が新卒で入った会社を辞めたのは良い判断だと思う。
だからといって、その仕事をしても意味がない、将来性がない、というは違うよな。ひたすら電話をかけて断られ続け、見込みの少ない顧客に営業をして受注とったという経験は、今後、活きてくる可能性もある。なにが役立つかは、予測できない。その仕事をモチベーション高くできる人はやったらいい、それが合わない人は別のところで尽力すればいい。職業に貴賤はないはずだよね。