オナホ売りOLの平日

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安倍晋三の御用記者、青山和弘の描くかっこ悪い総理大臣

山口敬之さんの「総理」という本はとても面白い。山口敬之さんは、彼が女性を酒に酔わせ暴行したという事件で一躍有名となった。彼の行ったレイプ行為は許されないことだと私は思う。お酒で意識を失い、自分の意志を表明できない女性に一方的に性的暴行することは絶対によくない。しかし、彼の犯した罪が卑劣であることと、彼の書いたものが読み応えのあることは別だ。彼の書いた作品は面白かった。

総理 (幻冬舎文庫)

総理 (幻冬舎文庫)

 

 

◆かっこよすぎる安倍晋三麻生太郎

「総理」は安倍晋三麻生太郎といった政治家の見えない部分をかいまみえるノンフィクション。この本のなかで、安倍晋三麻生太郎といった登場人物たちはすべてかっこいい。器用に立ち回りながらも、義理人情に厚くい。まるでハードボイル小説の登場人物のようだ。

2007年、参議院選37議席という惨敗の結果を受け、政局が大きく揺らいだ。外務大臣としてフィリピンを訪問中の麻生太郎を訪れた著作は、麻生から、内閣の人事案を預かってほしいと頼まれる。

麻生のペンはよどみなく、すらすらと動いた。私は、与党の食幹事長に内定してる人物が総理に人事案を認めるという、政治記者としては極めて特異な状況に遭遇し、しばらくの間沈黙を守っていたが、麻生の筆の運びがあまりに滑らかなので、ついに口を挟んだ。

「筆に全く迷いがありませんね」

「簡単なんだよ。親分を絶対に裏切らないやつだけを選ぶ。そうでなければ、ねじれと言う難局を乗り切れるはずはない。ここに書いた名前は、ボスを裏切らない奴ばかりだ。最初の組閣で派閥の論理に妥協してしまったことを、安倍さんは今とても後悔しているはずだ」

「裏切りと内輪もめに苦しめられましたからね」

「人事というのは、絶対不可侵の総理の専権事項だ。これは俺なりの案だが、安倍さんの選択肢を狭めたくはない。明日東京に帰ったら『絶対に裏切らないと言う観点から麻生なりに考えた布陣です。あくまでご参考』と言って安倍さんのところに持っていけ」

 このほかにも、安倍晋三が、被災地で、親をなくしながらも健気に生きる少女に出会い、彼女によりそい、所信表明演説で彼女のことを語ったシーンは鳥肌がった。安倍晋三麻生太郎、父や祖父に偉大な政治家をもち、自身も首相という重圧を経験したもの同士の友情や思いやりは見ていて気分が高揚する。だけど、一方で、ちょっとかっこよく書きすぎ何じゃないかなとも思ってしまう。

ノンフィクション小説として読むならば、とても読み応えがあるけれど、ルポにしては少し偏っているように思える。現役の政治家に関して、こんなによく書いていると、宣伝本かなとも疑ってしまう。それくらい、この本の中の安倍晋三麻生太郎はかっこいい。

同様のことを指摘するメディアもある。ニュースサイトリテラでは、山口さんの書いた「総理」を気持ち悪いほどの安倍礼賛本と語っていた。たしかに、イデオロギーの違う人からみたら気持ち悪く写るかもしれない。

lite-ra.com

 ◆少し頼りない安倍晋三

ちなみに、同じニュースサイトに「政権の腹話術人形」と揶揄された記者がいる。青山和弘さんだ。政権擁護だと批判された彼の本の紹介が、政敵である枝野幸夫氏のツィッターに流れた。枝野幸男はこの本を「多くの人に読んでもらいたい」と発言している。

枝野幸男は、文春オンラインに以下のように本の感想を書いている。

bunshun.jp

本書にある私の「オフレコ」での青山氏に対する発言も、すべてが「本音」という訳ではない。おそらく安倍総理についてもそうであろう。どんなに信頼関係があっても、腹の内をすべてさらけ出すようでは政治的リーダーとして務まらない。

しかし、プロ中のプロと言える青山氏の取材力と人間力で、日々の報道では絶対に伝わらない背景や経緯の真相に、しかも与野党双方について、限界まで迫った画期的で価値の高い内容となっている。

 

青山さんの著書「恩讐と迷走の日本政治-記者だけが知る永田町の肉声ドキュメント-」は安倍晋三と枝野幸夫という与野党トップを取材した本だ。山口さんの「総理」かっこよくて、ハードボイルドな総理を書いた本であるならば、青山さんの「恩讐と迷走の日本政治」はちょっとダメだけだけど、失敗しながらがんばる可愛い政治家たちを書いた本だと思う。

 

著者がテレビ番組で、加計学園の問題を解説した直後、安倍晋三から電話がかかってきたエピソードがある。この日、著者は、加計理事長と安部晋三があまりに仲良く疑われるのも納得すると語った。

これで24分間のコーナーは終わった。ワイドショーでの解説はいつも緊張し強いられる。的確な言葉を咄嗟に選ばなければならないのもそうだが、他のコメンテーターの認識が間違っていたり、あまりに極端な意見を言った時に修正する役割も私には求められるからだ。

そんな緊張から解放されて、取材のため急いで国家に向かっていたその時、私の携帯が鳴った。安倍からだった。

「あー、もしもし安倍です」

「おはようございます。どうしましたか」

「『スッキリ』見てたよ」

安倍が私の中継や解説を見て連絡してきたことは、初めての事だった。何か大きな間違いでもあったのか。私は身構えた。

加計学園の問題の件で解説しました」

獣医学部の設置は、安倍政権で急にとんとん拍子に決まったんじゃなくて民主党政権でも『(2011年度中を目処に)速やかに検討』に格上げされているんだよ。そこも伝えてくれないと不公平じゃないか」

「ただ決定はしていませんよね」

「そうだけど、民主党時代から前向きに検討しているんだよ。獣医学部を新設する事は鳥インフルエンザとか狂牛病とか新たな時代の要請もある。そういうところにも触れてもらっないとね、解説なんだからさ。私は青山さんがいろんな意見を言うのは全然構わないんだよ。構わないんだけど、事実関係は公平に紹介してもらいたいんだよな」

著者は今までこのように安倍晋三が報道に対して意見を言ったことがなかったと、驚きを表した。それだけ、この緊迫した状況に焦っているんだ。だけど、この落ち着きなくいらだっている様子は、山口さんの本にはない安倍晋三像だった。

ほかにも、安倍晋三枝野幸男のダメだけど、人間らしい応援したくなる一面を紹介している。以前、ブログで、ヒーローには「助けてくれるヒーロー」と「助けたいヒーロー」がいると書いたけれど、山口さんの書く安倍晋三は前者で、青山さんの書く安倍晋三は後者なんだ。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

青山さんは本の中で安倍晋三をこう、表している。

 私は2015年10月に出版した拙著の中で、安倍の姿勢について以下のように指摘している。「首相と言う立場にある政治家として、強引だとか感情的だと捉えられては、マイナスに働いてしまう。また無意味な争いや失言につながることがないよう慎重にコントロールしていくことが必要だろう」

安倍さんとホンネで話した700時間

安倍さんとホンネで話した700時間

 

 

安倍晋三枝野幸男も完璧じゃない

感情的になる部分も多い指導者。それでも、四苦八苦しながら戦っている。本の中には安倍晋三枝野幸男が不器用ながらに、有権者の心を動かすよう奮闘する様を描いている。政治記者と政治以外の関係でも言えることだけど、自分の尊敬する人や憧れている人の悪い面は見たくないし、欠点に目をつぶって妄信してしまう部分はある。青山さんは、安倍晋三枝野幸男に寄り添いながらも、客観視する視点を失っていない。善悪を振り分ける目があるんだろうな。

もちろん、政権の腹話術人形のいうこと、そうやって政権人気をとる作戦かもしれない。だけど、それでも、その作戦にはまってしまってもいいかもしれないなとも思えた。