オナホ売りOLの平日

大人のおもちゃメーカーで働くOLのブログ。

女の子はみんな、りりちゃんを抱えている

頂き女子りりちゃんのnoteを見た。見てはいけないと思いつつ見た。りりちゃんこと、渡辺麻衣被告は、複数人の男性から大金をだまし取った女だ。一千万以上のお金をだまし取られた被害者もいる。地道にためた金を盗み被害者の側の人生を取り返しのつかないものにした。渡辺麻衣被告の犯した罪は許されない。

当該のnoteは、犯罪の手立てを示したと言われている。詐欺罪で懲役9年の判決を受けた女の書いた文章だ。倫理も道徳もない悪事の手法が書かれているだろう。そんな予測を立てて、怖いもの見たさで見た。だけど、書かれていた文章はあまりに当たり前のことで拍子抜けしてしまった。こんなこと、女のとして生きているなら、誰でもやっていることだ。

りりちゃんは語る。「助けてあげたくなる女の子」のキャラ設定をしましょう、と。りりちゃんの言うキャラ設定とは、被害者と接するときの人物像。純粋無垢な女の子になりましょうと、わたしたちに語り掛ける。具体的には……男の人が苦手で、友達作りが苦手な女の子。自分にお金を使わなず、精神的にも体力的にも弱弱しい子。外見は清楚で、暗い髪色、ネイルも服装も大人しい。相手と接するときは、常に口角をあげて、よく頷き、相手の話に興味を持つ。コミュニケーションの際は恋愛経験の少なさを垣間見せ、知っていることでも「知らなかった」と言う。

提示する行動、振る舞い、見た目……異性にとり入る方法としてどれも意外ではなかった。一部は自分もやったことがある。りりちゃんの教える振る舞いをわたしは意図的にしていた。

興味がなくても興味をもった振りをしたことはあった。知っていても知らないふりをする場面もあった。恋人の話をあえてしないようにした場面もあった。異性に好かれるため、嫌悪されないため、円滑なコミュニケーションのために敢えて行っている行為があった。ここに書かれていること、ひとつもやったことない女性なんているのだろうか。

もちろん、わたしも含め多くの女性は詐欺罪を犯していない。金を奪うためではなく、好きな異性を不快にさせないため、とか、場を壊さないためとか、面倒な小言を言われないため、とかそんな理由での振舞いだった。りりちゃんとは違う。違うけれど、りりちゃんを自分とは別の存在だと切り離すことはできない。多くの女性がりりちゃんを擁護したくなる背景には自分たちも、りりちゃんの振る舞いをやっていた、そしてその行為はありのままの本心ではなかった、ということがある気がしている。

 

◆りりちゃんは男性に絶対に嫌われないための参考書

りりちゃんが詐欺を行うターゲットは限られている。彼女の言葉を借りれば、「仕事にやりがいを感じてなくて、ただなんとなく生活のために出社している」「モテたことがない」だけど「気遣いをしてくれる」「一人でいることが多い」男性。ネット上には、リリちゃんの振る舞い、見た目は、りりちゃんのターゲットになる、モテたことのなさそうな男性だけに好まれると言われている。

だけど、わたしはりりちゃんのふるまいや見た目は、男性全般にうっすら好かれる振る舞い、見た目だと感じる。少なくとも、異性に嫌われない女の子だ。

今まで、りりちゃん的なふるまいや人物像を好む男性をたくさん見てきた。「お金がかからなそう」という理由で伴侶を選ぶ人、派手な化粧や髪色を嫌煙する人、異性の友人が多い人、恋愛経験が豊富な人を好ましく思わない人……恋人や妻がいて、堅実な仕事があり、見た目にも気を使う男性でもりりちゃん的ではない女の子像――個性的だったり、派手だったり、目立っていたり、自己主張が激しかったり……そんな女性を嫌煙する。

それが分かるから、女性はみんな場の空気を崩さないように、りりちゃんになる。無難に、清楚に、個性を消した存在になる。場を壊さないために、嫌われないために、りりちゃんになる。

 

◆詐欺師ではないりりちゃんたち

ありのままの自分では、好かれないから、みんなりりちゃんの見た目、ふるまいを目指す。

誰か一緒にいる恋人がほしい。

場の雰囲気を壊して顰蹙を買いたくない。

変な奴のレッテルを貼られたくない。

……女の子は色んな理由でいつもりりちゃんになっている。それ故に、りりちゃんを極悪詐欺師だと決めつけることができない。りりちゃんは、多くの女性が、無難にやり過ごすために作っていた虚像を嘘と示してくれた。清楚で、地味で、いつもニコニコ、相手の話を聞いてくれる女の子像なんて、本心じゃないって、示してくれた。

興味もてない話でも、とりあえず頷いて聞き流しす。相手に話されてばかりで、自分の話なんて一個も聞いてもらえないけど、ニコニコする。奇抜ではないけれど、やってない感もない、適量の化粧をして出かける。嫌われないように、自分を取り繕う場面は無数にある。嫌われない手段を選ぶ女の子……詐欺をしないりりちゃんは無数にいる。性体験や、疑似恋愛を提供する商売以外でもいる。そんな女の子たちの多くは、りりちゃんに自分の日々を重ねてしまったのではないだろうか。

 

◆りりちゃんを辞めた気持ち悪いわたし

りりちゃんのような女の子像をやめればいい? りりちゃんの振る舞い、見た目をやめて、幻滅される未来が、わたしたちには予想できる。りりちゃんの指し示す虚像を辞めたら、それは好意から嫌悪に変わる。

ライター田房永子さんの「男しか行けない場所に女が行ってきました」の中に、友達だと思っていた男性Kの話がでてくる。エロ本ライターだった著者は仕事で嫌だったことを彼にメールで話したら、「君は愚かしい」「気持ち悪い」と返信が来て、絶縁してしまう。

K君は自分の要望(会いたくはない。会って顔見たらつまんないから。自分が電話したいときだけでてくれればいい。だけど、そっちの人間的な苦しみを丸出しにされても困る。そんなことされたらこっちから切る)ばっかりで、私のことは人として見てなかったんだ。

 

話たいことを話したら絶縁される。酷いなと思ってしまうけど、きっと、こんな状況はよくある。期待したコミュニケーションをとってくれない女は愚かしくて、気持ち悪いと言われる。理想の像である女の子しかいてほしくない。相手の本心など、意味がない。

男の人にりりちゃんではないわたしたちも受け入れてほしい。一方的につまらない話をしてもまずは聞いてほしい。常にニコニコはできないし、納得できないことは意見させてほしい。好きな服装や化粧を素敵だと言ってほしい。異性や性の話も自由にさせてほしい。それを話しても嫌がったり、性行為をせまったりしないでほしい。

だけど、それはきっと、叶わない。だからやっぱり、りりちゃん――渡辺麻衣が、詐欺罪の判決を受けた女で、人の人生を潰すような行為行った人間だと理解できても、憎み切れないでいる。