オナホ売りOLの平日

大人のおもちゃメーカーで働くOLのブログ。

屋根のないところに落ちる

作家の雨宮処凛さんが書かれた記事で、震災で、被災した状況で、同じように被災した男性に性的なサービスをする女性を取り上げ、被災者であり、風俗嬢として同じ被災者を癒す人は誰かいるのか、疑問を投げかけています。

癒されたがる男たち | 連載コラム | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス

 

ああ、たしかに、自分も辛い中で、彼女たちは辛い人をいやしているんだな。だけど、だからといって、男性と同じような内容の風俗を性別だけ逆にして行い、それで女性たちが楽になるのかと言われれば疑問を感じます。

 

◆そもそも女性は明確に欲求をいえない

じゃあ、女性は、なにをしてほしいのかと言っても、女性にとってこれをしたら幸せ、これをしてほしいという明確な欲求は明らかになっていないように思います。AV監督の二村ヒトシさんは「なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか」で一般女性との対談の中でこんな話をしています。

昔から言われていることだけど、女性はそもそも『自分の欲望がわからない』んですよね。わかりやすく彼氏が欲しいとか結婚がしたいとか、アクセサリーが欲しいとか旅行したいとか言う表面的なことじゃなくて、その元になっている根本的な欲望が。

 

◆必要とされることが自分の価値

この欲求を明確化できない根底には、たぶん、女性の自信のなさみたいな部分があるように思うんです。FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグの「リーン・イン」の記述を紹介します。

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
 

 フェイスブックに財務長官ティム・ガイトナーを迎え、朝食を取り交わしながら、経済について意見をとりかわす会議で、女性出席者がなかなかテーブルの席につけず、会場の隅の椅子に腰掛けていたときのことをシェリルはこう書いています。

あの時私は、女性の内なる障害がどれほど行動を変えてしまうかを目の当たりにした。そして、女性は制度的な障害だけでなく、内なる障害とも闘わなければならないと気づいたのだった。

TED講演会で、女性が仕事で成功するにはどうしたらいいかと言うテーマで話した時、私はこのときの体験談を取り上げ、女性がいかに自分から引っ込んでしまうか、文字通り試合を外から見物する人になってしまうかを話した。とは言え彼女たちがテーブルにつかなかったとき、その気持ちが私にはよくわかった。部屋の隅っこに引っ込みたくなる自信のなさ、椅子に根が生えてしまったあの行動は、私にもなじみのものだったから。

(中略)

十分な実力がありながら理由もなく自信を持てずに悩む症状には、ちゃんと名前がついている。インポスター・シンドロームと言うのだ。インポスターとはペテン師のことである。男も女もこのシンドロームにかかる可能性はあるが、女性の方がなりやすいし、この症状に行動を束縛されやすい。女優としても脚本家としても大成功しているティナ・フェイでさえ、この症状にかかったことがある。平和イギリスの新聞の取材に応じて、『インポスター・シンドロームが重症になると、『私って凄い』と『私なんてまるでため、みんなを騙しているペテン師に過ぎない』と言う2つの気分の間を激しく行ったり来たりするようになる。この症状に陥ったら、私ってすごいと言ううぬぼれ気分にうまく乗っかってそれを楽しむことが大切ね。そうやって、ペテン師気分に落ち込まないよう、うまくかわすこと。そもそもほとんどの人は何らかの形で他人を騙しているのだから、深刻に悩まないほうがいいわ』。

女性の場合、この症状は男性より重くなりやすい。もともと日ごろから自分を過小評価する癖がついているからだ。様々な職業について実施された多数の調査結果、女性は自分の仕事の成果を実際より低く見積もる傾向があるのに対し、男性は高く見積もる傾向があることが判明している。例えば外科手術の実施を行った学生に自己評価させると、女子学生は男子より低い点数をつける。しかし強化による評価では、女子が男子より高得点になると言う。政治家志望数千人を対象に行われた調査では、経歴や資質面がほぼ同等であっても、『候補者として自分こそ最もふさわしい』と答えた男性の方が約60%も多かった。

 自分に自信を持てない。できるように思えない。だから、風俗店で男性をいやしたり、被災地の避難所で料理をふるまうことで、必要とされている自覚を持ち、自信をもつことができる。他者の承認によってのみ幸せになれる。

 

◆男女平等に必要なのは女性が自分を理解すること

さきほど引用したシェリルの本に、「ティアラ・シンドローム」という傾向を紹介しています。いい仕事をしていれば、誰かが気づいて冠をかぶせてくれると期待する。理想的な社会であれば、ティアラはふさわしい人の頭に乗るでしょう。だけれど、それはおとぎ話の話で、私たちは、ほしい物とほしいと言わなくては手に入らない。

主張して疎ましく思われることより、いつか、誰かが気づいてくれることを期待だけする。男女平等にするとしたら、彼女たち自身の変化が必要なんじゃないかなって思う。

 

◆屋根のないところに落ちる恐怖

あとは精神論になってしまうけど、女性自身の経済的に背負っている感みたいなものを見せる必要もあるよなと思う。経営学者の国保祥子さんのインタビューはすごく納得感があって、女性に求められる役割、人をいやすだったり、ご飯をつくるだったりをかわってほしいというならば、男性に課されている役割、経済的な部分が大きいと思うけど、それを、負うと発信したほうが、きっと、うまくいくように思う。

www.huffingtonpost.jp

話はそれますが、大学生だった頃、ホームレスの炊き出しのボランティアをしていたんですね。現在、路上生活者は減っているとニュースになっていますが、当時はリーマンショックの直後でたくさんの方が食事をもらいに集まっていました。池袋で行っていて、毎回、だいたい200~300人は来ていたと思います。週一回、1年くらい続けて、たまーに、おばあちゃんも見かけましたが、基本的に女性の方はほとんどいません。20~30代の方もまばらで、大半が中高年の男性でした。

そこで、屋根のないところに落ちるのは男性だけなんだなって思いました。わたしはお金のない女性がどこにいくのか分からない。好きと言えるかわからない男性と付き合って世話をしてもらうとか、生活保護をもらいながら公営住宅で暮らすとか、ノンフィクションで書かれているように、体を売ってお金をもらうとか、一般的な幸せとは離れた生活をしているのかもしれない。

だけど、このおじさんたちと同じように、屋根のない場所で暮らしたりはしないんだなと思うと、わたしは男性のほうが、落ちる底が深いように思いました。

雨宮さんの記事にも男性の方が自殺率は多いと書かれていたけれど、やっぱり、この恐怖感とか、切羽詰まった形は、男性だけにあるんだと思う。それを、少し肩代わりすることが公平になるきっかけなんじゃないかな。