オナホ売りOLの平日

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好きなタイプを聞かれて「情緒が安定した人」と答える人とは付き合ってはいけない

作家、中上健次ゴールデン街で酔って暴れて人を殴った時、居合わせた経済学者の西部邁は「小説家っていうのはあんなにノイローゼ気味なの?」と呆れかえった。

ツイッターを見て、そんな逸話が頭に浮かぶ。好きなタイプを聞かれて「情緒が安定した女」がいいという男が嫌いだと、言う発信を目にした。情緒の安定した女がいい――情緒不安定な女はいやだってことか。情緒不安定って、どんな女だ、酔って暴れる女か……それは確かに困る。伴侶や恋人を警察に迎えに行くのは嫌だ。勘弁してほしい。だけど、それを、「好きなタイプは?」の質問で答えるのはいかがなものか。たしかに、周囲に危害を加える恋人は勘弁してほしいけれど、それを「好きなタイプ」の答えにしてしまう人も、異質というか、情緒不安定とは違うベクトルで、なんとなく付き合いたくない。この「なんとなく」をできるだけ言語化したい。たとえば、以下のような「可能性」があるのではないか。

 

◆そもそも恋愛したくない可能性

好きなタイプは?――恋人にしたい条件を聞く質問だ。どんな人間とならば恋愛を楽しめるかを聞いている。恋愛の楽しさ、ワクワク感、高揚感……その人のとっての恋愛の素晴らしさを語ってほしい。見た目が可愛いでもいいし、おっぱいが大きいでも、聞き上手でもいい……この恋人がいて、こんな素敵な恋愛をできるといいな、というものを語ってほしいのに、答えているのは「こんな恋愛はいやだ」なんだ。情緒の安定しない女との恋愛は嫌だ。『「情緒が安定した人」と答える人』は、恋愛について語るとき、嫌なことを語ってしまう。彼らは恋愛を、あまりしたくないのではないだろうか。そもそも恋愛をしたくない、できれば避けたいと思っている人と恋愛をするのは、楽しくなさそうだ。恋人らしい行為をできれば避けたいと思っているのだから。恋愛に乗り気でない人と付き合ったとしたら、こちらばかりが能動的に動くことになり疲弊する。

 

◆元恋人の悪口としての「情緒の安定した女がいい」の可能性

情緒が安定した女がいい、とわざわざ言う背景には、「情緒が安定しない女」に苦しめられた過去がある可能性がある。元恋人なり、元配偶者なり、もしくは、今現在のパートナーなりが「情緒が安定しない女」だった。それ故に、あれはいやだと思う。おそらく彼らは、ヒステリーに耐え、苦労をした。一方で、その不安定な情緒を乗り越えるなり、共存するなりができなかった失敗をした人でもある。不遇に寄り添えず、切り捨ててしまった事実を表している。もし、事故や病気、失業など、「情緒の不安定」以外の不遇を負った際でも切り捨てるのではないか?と想像させる。

そもそも、その彼女が「情緒が安定しない女」だったのはなぜだろう。生まれつきの性格か、精神的な疾患なのか、体調不良故だったのか、それとも、その男の態度に憤っていた可能性もあるのではないか。この人は「情緒が安定しない女」が、なぜ情緒不安定になったのかを探り、解決に導くことができなかった。「情緒が安定しない」は、もちろん、その「情緒が安定しない人間」の問題だ。だけど、その相手にも、ハンデや欠点を一緒に解決に目指せなかった失態はある。そもそも人間関係において0-100でどちらか一方が悪い場合はまれだ。一方にも、わずかであったとしても反省すべき点はあったかもしれない。それなのに、一切自己を省みることなく、昔の恋人や伴侶を悪者にしてしまっている可能性を感じてしまう。

 

◆自分に迷惑をかける人が許せない可能性

恋人の一番条件として、「情緒が安定した人」をあげる。それは、情緒不安定になって自分に迷惑をかけないでね、と内心思っている可能性がある。最優先事項が「自分に迷惑をかけない人」であるということだ。相手の人となり、個性は二の次、自分が不愉快でないことが、人間関係において最重要。他者を慮ってない。

人間関係、とくに親密な関係になった際、一切の迷惑をかけずに関係を続けていくことは難しい。他者の欠点を許容し、自分の欠点を許容してもらい関係を続けるしかない。他者の欠点を許容するという想定がないのは、人と関係を結ぶのが得意ではないようにも思える。自分に迷惑をかける人を許せない、他人に優しくできず自分の事ばかり考えてしまう人の可能性がある。私は、他者を慮れない人を伴侶や恋人にするのは、疲れてしまいそうだなと、思ってしまう。

 

「情緒が不安定」は欠点ではある。情緒は安定していた方がいい。だが、それを「好きなタイプは?」と聞かれ真っ先に答えてしまう人は、不寛容だなあ、ちょっと付き合いにくそうだな、と見てしまう。

酒を飲むと荒れて暴れ、ノイローゼ気味と評された中上健次だが、妻も子供もいた。娘の中上紀は作家としても活躍し、父を語る文章も書いている。「情緒が安定した人」がいいと言うような人には考えられないことだろう。

情緒が安定しない人と過ごす生活は面倒ごともある。相手に振り回されることもあるかもしれない。だが、一方で、強い感情表現故の楽しさを発見できる。消去法で人生を選ぶことで、そんな楽しい日々を逃してしまうかもしれない。面倒な楽しさに気が付かない人を選びたいなとは私は思えなかった。