オナホ売りOLの平日

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望月衣塑子原案「新聞記者」は卑怯な映画だ

西部邁さんの「妻と僕 寓話と化す我らの死」でとても好きな箇所がある。自身の妻から「あなたはどうして左翼というものをやめたの」と聞かれた西部さんは以下のように答える。 

妻と僕 寓話と化す我らの死

妻と僕 寓話と化す我らの死

  • 作者:西部 邁
  • 出版社/メーカー: 青志社
  • 発売日: 2018/07/05
  • メディア: 単行本
 

 

左興方面の文献をいろいろ読んでみたところ、誠実だが選鈍、といった印象を強く受ける。その印象のうちには、自分は間違っているかもしれぬと内心ではわかっているのに、自分は間違っていないと確信しているふりをする、ということも含まれる。その意味では、左翼の連中の誠実さというのは、傲慢と同義なんだ。実は、そのことは、読書をする前にわかっていた。仲間の言動を見ていてそう思ったし、ほかならぬ自分が、傲慢な誠実、の轍にはまっている、と認めざるをえなくなった。前に別れるときに話したように、そんな僕が正当な理由なしに敵対党派の大網を殺すか、彼らに殺されるのは堪らんと思った。

 

 西部さんは、大学時代は学生運動に身を投じ、左翼運動家として活動してきた。その経験の結果をもって、この言葉がでたのだろう。だけど、西部さんのような、過激な青春時代をすごさなくとも、今の若者は西部さんが言ったこの事象に気が付いているような気がしている。先日の選挙結果、20代は与党支持者が多かったと報じられた

www.nikkei.com

  

悲惨な安保闘争とその結果の虚無を経て、西部さんがたどりついた思想。その思想に、今の20代、30代は安全な位置にいながら気が付いている。政権交代と、その後の虚無。そんなものを見せられたら、きっと、火炎瓶もゲバ棒も使わずに、この虚無感に気がつくのだろう。なにをやっても今まで変わらない。だったら一番マシなものを選べばいい。この前の選挙の直後、ジャーナリストの津田大介さんは沖縄の若者に自民党支持が広がっていると嘆いていた。どんな地域においても、若者の与党支持は広がっている。

 

 

そういえば、参院選の投票日より前に、映画「新聞記者」をみた。わたしが行った映画館がたまたまそうだったのかもしれないけど、振り返って観客席を見たら、60代かそれ以上に見える、ご年配の方ばかりだった。「新聞記者」の原案は東京新聞の望月衣塑子記者。政権の中枢、管官房長官に舌鋒鋭く切り込む女性ジャーナリストとして話題になった人物。彼女の思想に共感するのは、青春を左翼運動にささげた方々が多いのかもしれないな。今回の選挙結果をみて、若者の少ない観客席を思い出した。

shimbunkisha.jp

 

新聞記者

新聞記者

  • 発売日: 2019/10/23
  • メディア: Prime Video
 

 

◆視聴者を誘導するフィクション映画「新聞記者」

映画「新聞記者」は、権力中枢の闇に迫る女性記者と、内閣情報調査室に勤める若手エリート官僚の対峙と葛藤を描く作品。フィクションなのだろうが、「加計学園問題」や「伊藤詩織さんの準強姦訴訟」など実在の事柄を連想させる描写が多く、わたしは好きじゃないなと思った。フィクションをつかって、見ている人の政治的な思想を誘導しているように感じた。内閣情報調査室に勤める人たちが、政府に都合の悪い人の批判をネットに書き込むシーンや、首相の友人が経営する大学が、軍事兵器の研究を行おうとしているとわかるシーンなど「本当なのかな?」と疑うシーンがあった。

内閣情報調査室に勤める人たちがネットに書き込むシーン」に関しては、実際の元内調職員が事実と異なると語る記事もでている。

gendai.ismedia.jp

 

実際に、映画に描かれていたようなネットを使った情報操作は行われているのか。元内調職員に聞いてみた。

「まず、ありえません。というのも250人の職員は国内、国際、経済など各分野に分散配置されていて、とてもではないですが、1日中パソコンの前に座って世論操作をやっているヒマはないからです。

それに、映画に出てくる杉原は外務省からの出向ですが、外部の人間にそんな怪しい任務を任せたら、あっという間にリークされて週刊誌ネタになりますよ(笑)。今でもキャパが足らず、本業の分析ですら追いつかないくらいですから。

大体、ネトウヨのアカウントに数十人が必死で書き込むだけで、世論操作なんてできるんでしょうか。そんなに簡単に誘導できるなら、逆になぜ今、政権批判アカウントがあんなに活躍できているのか。いくらフィクションとはいえ、ちょっと内調の力を過大評価しすぎかなと思いました」

この元職員は、こうも指摘した。

「内調の現場を仕切る杉原の上司が、官邸前のデモ参加者の写真に印をつけて『これを公安調査庁に渡して、経歴を洗え』と指示するシーンには違和感がありました。内調から見ると公安調査庁はライバルですし、組織としての格も対等ですから、命令できるような立場にもない。こういう細かいところが取材不足で、『新聞記者』と銘打っている割にちゃんと取材できてないんじゃないか、と言いたくなりますね」

  

軍事兵器の研究に関しては、加計学園での研究が軍事利用される恐れがあると言う意見もある。だけど、『マスコミも書いていない仮説なので信用されないかもしれない』という注意書きがあり、有識者のイチ意見としかでていない。この後、望月さんが取材をして事実であることを証明しているのかもしれないが、わたしが調べた限りでは見つからなかった。

www.huffingtonpost.jp

 

加計学園問題は、安倍首相が長年の友人に対する不公正な利益供与を行なった政治的スキャンダルであることは論を俟たない。実は、この加計学園問題で注目された獣医学部の新設条件、いわゆる「石破4条件」から、軍学共同と関連した「生物化学兵器の研究」の拠点作りという新たな側面が浮上しており、今後はむしろこちらの方が大問題に発展する可能性がある。ここにその根拠を書いておきたい。マスコミも書いていない仮説なので信用されないかもしれないが、以下を読んで判断されたい。

 

わたしも望月さんの書いた記事をすべて読んでいるわけではない。だからもしかしたらこういった事実を報じていたかもしれない。だけど、報じてないのであれば、これを新聞記者が原案と謳った映画で描いてしまっていいのだろうか。これを見ることで、政権へ批判的に考えるように誘導される。政府って実はこんなことをしているんじゃない?と疑ってしまう。

そして、もし、これは事実であるならば望月さんは、ジャーナリスト望月衣塑子として、自身の勤める新聞社でキャンペーンを打って大々的に報じるなり、ノンフィクションの書籍を出版するなり、事実として大きく報じないといけない。こんな事実があります、恐ろしいです、と警笛を鳴らすのがジャーナリストの仕事だ。ジャーナリストが、事実を似せているだけです、と逃げ道を作って表現するのを良いと思えない。そしてこれが事実でないなら、ジャーナリストが見ている人を誘導するような作品を作ってしまうのはよくないと思う。

以前、元TBS記者の山口 敬之さんが書いた「総理」が政権を持ち上げる安倍礼賛本だと、ニュースサイトリテラに批判されたけど、望月さんが原案を考えた映画「新聞記者」は政権を誹謗中傷したイデオロギー映画に見える。わたしは、どちらもジャーナリストの立場の人が発するものとして、相応しいものだとは思えない。だけど、とくに、望月さんの発していることは私刑(私人が勝手に加える制裁)に違いように思う。事実かどうかではなく、自分の善悪の感情だけで、人や組織を社会的に傷つけてしまっていいのだろうか。それをジャーナリストが行ってしまっていいのだろうか。

lite-ra.com

 

mochi-mochi.hateblo.jp

 

 

◆ジャーナリストとして報じるリスクと恐怖

だけど一方で、すごく腑に落ちたシーンもあった。松坂桃李さん演じる官僚に取材をするシーン。主人公の女性記者は、政権にとってデメリットとなる情報を聞く。この事実を報じたい、だけど誤報であると政府から批判されたらと不安に陥る。このシーン後、主人公の父親が自身の報じた誤報により、過剰な批判受けながら亡くなっていったことが明らかになる。

嘘を報じるリスク――それが新聞記者にとって大きな恐怖であることが、この映画を観て伝わった。主人公の父が報じたスクープは、実際は誤報ではなかった。それでも、無実の罪は晴らされることなく、嘘を言った記者として死んだ後も悪く言われ続ける。新聞記者として、ペンを持つ望月さん自身もその恐怖は付きまとっているのだと思う。

だけど、だからこそ、ジャーナリストである彼女が、「フィクションの映画」として、この話を世に出すのは卑怯だと思う。もしここに書かれていることが、望月さんが見てきた事実であるなら、ウラをとって、新聞記事なり、ノンフィクションの書籍として世に出すことが、ジャーナリストとしての仕事だ。こんな形で、こんな映画の原案に付き合っている時間があるならば、もっと、もっと、取材をして、記事を書いて、ジャーナリストとしての仕事をしてほしい。わたし自身ジャーナリストになりたかったので、すごく、すごく、もどかしい気持ちになった。

 

◆軍事利用をいけないと言い切れなかった望月衣塑子

望月衣塑子さんは、2019年4月16日、東京MXの番組「モーニングクロス」に出演していた。そこで、望月さんは宮古島にある陸上駐屯地に関して、防衛省が小銃などの保管庫と説明していた施設が弾薬庫だったことを批判した。さらに、宮古島の軍事利用がすすみ、要塞化しいていると非難する。それに対し、共演していた元産経新聞記者のジャーナリスト福島香織さんが以下のように反論する。

なんで宮古島に駐屯軍を置くかというと、あれは宮古海峡を守るためじゃないですか。あそこに中国艦船がしょっちゅう入ってきて、自分の海のよう通っているわけですからそれに対して、威嚇というか武力の力をみせるにはあそこに、対艦誘導弾とか必ず必要なんです。そのために基地作りましょうと言っているのに、今更保管庫とかいって

 

そこでそういうものが必要だって世論に説明するというのは、メディアも悪いと思うんですよ。悪いことをしているみたいに言うんだけれど、あそこに駐屯軍があるっていうのは、日本の国家、国防のためには、戦略的には非常に重要な場所なんです。

 

福島さんの批判に意見に対して、望月さんは、住民に説明してから決めるべきだったと意見を述べる。「説明を果たしていればこじれはなかったとおもうんですけど」と。そもそも、基地を置いてはいけないんだ、要塞にしてはいけない、そんな反論はなかった。テレビだから時間の関係もあったのかもしれない。それでも、わたしはトーンダウンした印象を受けた。

もちろん、平和は大切だ、軍事利用なんてしないほうがいい。だけど、それでは成り立たない。「もし外国から攻撃されたとき、日本人の平和を守るのか」と問われたらなにも言えなくなる。この番組に出た後、福島さんはツイッターでこんな発信をしていた。

 

福島さんは産経新聞時代、北京支局に勤めていた。中国で取材に協力し、福島さんに力を貸した中国の人たちがいた。中国の、市井の人々が悪いわけではない。でも、中国をはじめとした国々と、国と国として対峙するとき、軍事的な方法も用いなくてはいけなくなる。福島さんの意見を聞いていると、わたしは、臭いものに蓋をして、理想論だけを語ることが空虚なことのように思った。現実をみて、メリットとデメリットを天秤にかけて、そして、その中で一番マシな方法を選ぶしかないんだ。自民党に一票を投じた若者たちは、そのことに気が付いているのだろう。自分の本心を押し込めて、「自分は間違っていない」と思いこむことに意味なんかない。