オナホ売りOLの平日

大人のおもちゃメーカーで働くOLのブログ。

【告知】渋井哲也さんと高円寺パンディットでイベントします

愚痴を聞くのが苦手です。不安や不満を、聞けば聞くほど、自分の心も滅入る。とくに、攻撃的な言葉を使って不満を言う人の話は苦手だ。たとえ自分のことを言っていなかったとしても自分が怒られているようで緊張してしまう。

愚痴や不満が多い人とは、少しずつ距離を置く。最低限のやり取りだけで済ませよう、済ませよう。別に相手が憎いわけではない。それでも、むき出しの怒りの感情を見るのは怖い。たとえ、その人の言っていることに納得できたとしても、激しい言葉をずっと聞いていると落ち込んでしまう。そして、その怒りの矛先が自分に向かないか怖くなってしまう。だから、ちょっとずつ距離を保つ。

愚痴を聞いてあげなよ、という人もいる。ガス抜きも必要だよ、お互いに言い合えばいいと、知り合いのある男性は言った。だけど、わたしはそれで、ガス溜まるんだよ。適当な合図値を打っていたら彼が、ある人の不満を言った。

「辞めた後まで前の会社の悪口言って……」

それは、わたしが話を聞ききれなくて距離を保った人のことだった。ほら、やっぱり。不満を聞きすぎると自分のなかで消化しきれなくなる。消化不良になって、聞く側の不満もたまる。これ以上嫌いにならないために距離を保つしかない。それはもしかしたら当事者を孤独にしてしまうことかもしれないけれど。

 

 ◆渋井哲也さんの「ルポ 平成ネット犯罪」

渋井哲也さんの「ルポ 平成ネット犯罪」のなかには、たくさんの人の不安や不満が詰まっている。わたしが聞いてきた不満や不安よりも、ずっとずっとたくさんの声が書かれている。悩みの中身に大小はない。だけど、わたしは、渋井さんがインタビューしてきたような命に係わる悩みは聞いてきたことがなく、重い悩みだと感じた。良い本だった。発見もたくさんあった。だけど、読めば読むほど気分が滅入ってしまった。

ルポ 平成ネット犯罪 (ちくま新書)

ルポ 平成ネット犯罪 (ちくま新書)

 

 

渋井さんとは、あるイベントで知り合った。そのイベントで渋井さんは登壇者で、わたしは観客だったけど、ライターになりたいというわたしに連絡先を教えてくれて、本を書くことが決まった後は相談にも乗ってくれた。書き手の先輩として参考になる意見をくれた。そんな渋井さんと高円寺パンディットでイベントをします。ちょっと嬉しいです。

pundit.jp

 

 

少し渋井さんを羨ましいと思うこともある。渋井さんは大学を出た後、新聞記者になり、フリーライターになった。渋井さんが取材をしている事件や人間関係のトラブルは、わたしが取材したかったテーマだ。昔もブログにも書いたけれど、わたしは桶川ストーカー殺人の事件の取材をし、ストーカーの恐ろしさを浮き彫りにした雑誌フォーカスの清水潔記者に憧れジャーナリストを目指した。事件の裏側にある歪みを明らかにしたかった。だから、渋井さんの本を何冊か読んで、いいな、こんな仕事をしたかったな、と思った。けれど、今回出版された「ルポ 平成ネット犯罪」を読んだあとは、わたしには出来ないかもしれない気がしている。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

渋井さんが「ルポ 平成ネット犯罪」で取材をしてきた人たちは日々生きにくさを抱え、人によってはその生きにくさゆえに自ら命を絶ってしまったり、誰かを傷つけたりしてまったりしている。わたしがもし、この人たちに会って、直接話を聞いていたら、悲しさや怒りや不安や、たくさんのマイナスの感情にふれて、自分も引きずりこまれてしまうだろう。私自身も彼らのように生きにくさというマイナスの感情を抱え込み、きっと苦しんでしまう。
だからといって、渋井さんが取材対象者に親身になっていないわけじゃない。親身になって、近くに行って、寄り添っているから聴けた声を拾っている。寄り添いながらも自分を失わない。その自分を失わない精神的な強さが事件記者には必要なのだ、と十年前に諦めた夢を思い出した。きっと、わたしは、ジャーナリストになれなくてよかったのかもしれない。