オナホ売りOLの平日

大人のおもちゃメーカーで働くOLのブログ。

音楽フェス需要拡大の裏側で、なくなっていくライブハウス

渋谷にあったライブハウス乙がなくなるらしい。大学のとき、サークルの先輩がライブしていたな、と思いだした。思い出すぐらい、わたしは存在すら忘れていた。

 わたしが二十歳くらいのとき、知り合いのおじさんが「25歳を過ぎるとだんだん音楽を聞かなくなる」と、話していた。たしかにその通りで、大学を出たら、ライブハウスに行くことも、知らないバンドを探すこともしなくなった。

だから、なくなると聞いて、懐かしいなと思った。渋谷の屋根裏も、下北沢の屋根裏も、新宿のJAMも、いつの間にかなくなっていた。池袋にあったMANHOLEは浅草橋に移ったと、最近知り合いになったバンドマンの男の子が教えてくれた。90年代後半に生まれた彼は、渋谷の屋根裏を「そんなライブハウスあったらしいですね」と言った。彼は渋谷のパルコの向かいの、地下に続く階段を下りたことがないんだ。二十歳のころを思い出すわたしを置いてきぼりにして、Ellegardenのヴォーカルが組んだバンドがどれだけ素晴らしいかを彼は語り続けた。

 

◆CDが売れず増え続ける音楽フェス市場

ライブハウスがなくなったり、都心から移転したりしていく一方で、フェスの件数は増えている。ぴあ総研の調査によると、日本の4大ロック・フェスティバルと呼ばれている「FUJI ROCK FESTIVAL」、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」が軒並み盛況で、音楽フェスの市場規模が拡大されていると発表している。

corporate.pia.jp

 

映像や音楽コンテンツにお金を払う「コンテンツ経済」から、実際の体験にお金を払う「体験経済」、演者に共感し応援の意味を込めてお金を払う「共感経済」に移っていくと、以前、のSHOWROOM前田裕二社長が話していた。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

CDが売れなくなった現在、その埋め合わせをするように「体験」つまり、ライブやフェスでお金をもらうバンドも多い。今までCDで聞くしかなかったバンドを体験できるようになった。小さなライブハウスで無名のバンドを聞くために割いていたファンたちのお金が、今まで見ることのできなかった有名バンドの体験に消えていくのではないだろうか。

 

◆バンドは有名になっても経済的には困窮する

2000年代前半に、バンドを組み「RISING SUN ROCK FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」に出演していた知り合いがいる。彼のバンド時代の年収を聞いたら、私が想像していたよりずっと低かった。そこまでいってもそうなんだ、夢も希望もないなと思った。CDが売れなくなった今、現状は、おそらくもっと稼げない。「今は仕事しながらバンドする人が多いんですよ。フジロックに出演するバンドも仕事の休みを取って出演していたりするんです」。バンド取材の多いライターさんが教えてくれた。売れてもしんどい状況があるのは、音楽業界に門外漢のわたしでも感じ取れた。

 

◆現実が露わになりゆっくり沈んでいく

どんな業界でも、力のないところから衰退していく。音楽フェスの市場規模が拡大していることから、ライブ需要、音楽需要が拡大しているように見えそうになるが、実際は、末端であるライブハウスが抱えていた客を、大きなライブイベントや有名バンドが奪っているだけなのかもしれない。

最近、バンド「クイーン」の活躍を描いた映画「ボヘミアンラプソディ」を観に行った。作中で、フレディ・マーキュリーがこんな不満を叫ぶシーンがある

曲を作って、CDを出して、ツアーをする、曲を作って、CDを出して、ツアーをする、繰り返しだ。

華やかに見える音楽業界でも、実態は、ほかの業界と変わらない。ルーチンの退屈さも、弱い組織が淘汰されるえげつなさもある。だけど、それを上手に、上手に隠し、客を取り込んできた。現実が露わになった業界は、ゆっくりと、沈んでいくのかもしれない。