ジャーナリストになりたかった。週刊誌フォーカスに所属していた清水潔記者が書いた「遺言:桶川ストーカー事件の深層」という本を読んでこんな報道をしたいと思ったんです。男女の喧嘩で片づけられようとしていたストーカー事件が、実は、悪質な加害者の残忍な犯行だと報じた。「被害者も悪い」と言われた世論を覆して、ストーカー規制法ができる流れはすごくかっこよくて、わたしも清水さんのように、市井の声を世の中に届けたかった。自分の書いた記事で世の中を変えたかった。だけど、残念だけど、新聞社はどこも採用されなくて、わたしは小さな広告代理店で求人広告のライターとして働いた。
ライター時代、よく書けたと思える求人広告で採用が決まったとき。読んだ人の気持ちを動かせたようで嬉しかった。けど、そんな風に思うことは少なくて、わたしはライターを辞めた。作業みたいに、文字を書くのが嫌になった。転職活動中、アダルトの広報職の求人を見つけたの。その会社の広報さんは連載も持っていて、ああ、自分の言葉を発信できるかもなと、思った。
アダルトに偏見はあった。昔、ブログにも書いたけれど、大学時代、エロを研究のテーマにして、それを理由に出版社の採用試験に落ちたりもした。だから、この業界に行っていいのか悩んですよね。エロだし、リスクもあるし、どうようか、と。偏見もある、悪いようにも見られる、そんなデメリットがあるから、行くなりに、自分が納得できるなにかを得ないといけないよな。
最初にAVメーカーに入るとき、この業界で働くメリット・デメリット、この業界に入って、やりたいことを箇条書きで書いたんです。今見返すと、もっとうまい言葉選べよとか、気取った言い方してとか、思う。おいおい、恥ずかしいな。そのとき書いた「連載を持ちたい」とも書いた。最近、本当に連載はじまったんですよ。
シュールな絵柄になっているよ。うれしいよ。
ただ、今はやりたいことが出来てうれしいって気持ちだけではなくて、エロに興味をもつ、何か足がかりになればいいなと思うの。エロビデオ屋さんはどこも工夫しながら一生けん命営業していて、それでも今の時代DVDはうれなくて、大変で、悲しいなと思うことも多い。AVの出演強要問題もあり、業界全体への風当たりも今は強い。わたしがこれを書いたところでなにか変るか分からないけど、これを読んでアダルト業界に少しでも興味を持ってくれたら嬉しい。
面白いマンガもつけてもらった。これをみて、普段アダルトグッズにふれない人たちが「アダルトっていうほど悪い物じゃないかもな」と思ってくれたらうれしいなあ。自分の言葉でなにかを変えられたらいいと思うの。