オナホ売りOLの平日

大人のおもちゃメーカーで働くOLのブログ。

AV女優が稼げなくなる日

「アダルトはもうやらないよ」。

映像制作会社に勤める人とはなしていたとき。今度の営業に行く新規の取引先の話をしてくれた。その人の会社はアダルトも一般作品も扱う会社だったので、AVの制作ですか?と尋ねると、彼はそう答えた。

ああ、そうですか、そうですよね、とわたしは相槌を打った。あ、でも、アダルトグッズにも興味があるって話していたから、もし、グッズで仕事になりそうだったら間をつなぐよ、と彼は言った。ありがとうございます、助かります、とわたしは笑いながら、自分の会社のグッズカタログを渡し、この話は終わりにした。

「アダルトはもうやらないよ」。

アダルトはもうからないよ、とか、アダルトは規制が厳しいから、とかそんな言葉が背景にあるような気がした。今までアダルトの仕事たくさんしてたじゃないですか、そんなこと言わなかった。頭のいい人は、どんどん次を考えてすすんでいる。取り残されているのはAVにすがっているわたしたちの方だ。 

事実、AVの仕事はお金にならなくなっている。わたしが担当していた店舗は去年1年間で、7店舗閉店した。競合メーカーの営業さんもどんどん退職している。あのメーカーは、営業さんが辞めてしまったせいで、対応が遅くなってこまるんだよ、と店舗で聞いた。「仕方ないんだけどね」と、店舗の担当者は続ける。お金にならないから仕方ない。AVはもうからないから、仕方ない。去年のはじめ、AVの店舗は今の3分の1になると書いたけれど、予想した未来に近づいている。

mochi-mochi.hateblo.jp

 

 

◆儲からないAV業界

先日、AV男優の辻丸さんが主宰するイベントに伺った。

 

 業界内外の人が参加していて、知らないことも多く勉強になった。映画監督の森達也さんが、規定がなければやっていいはずだけど、倫理的に問題があると批判をうける、と話したのは印象に残っている。表現の自由と、ルールの問題、同じ表現であっても、なぜそれを表現するのかで、まわりの評価が変わる部分もあるのかもしれないな。それは、AVに限らず、表現全般として、なにを表現するかだけでなく、相手にどう伝わるかも重要になっていく。

 

そのイベントの中で元AV女優の松本亜璃沙さんが以前と比べて、AV出演のギャラが安くなったと話していた。AV自体が儲からなくなって、店舗はたくさん閉店メーカーの従業員も辞めている。その余波は、撮影に挑むAV女優さんにまで行っている。残念だけど、AV業界全体が「儲からない業界」になっている。

わたしは制作ではないけれど、女優さんのギャラを絞って、お金儲けしているわけではないように思う。制作費全体も削られているし、制作スタッフの人員も減っている。それでも女優さんあっての映像で、彼女たちのモチベーションにもなるできるだけ削らないようにしているように、そばで見ていて思う。だけど、それでも削らないといけないくらい、今の業界はお金がない。

 

◆高額なギャラと倫理の問題

最近、元AV女優の森下くるみさんが、自身の映像の配信を取り下げるように申請した。 

mainichi.jp

AV女優さんにも引退後の人生がある。彼女たちの意志を優先させ、営業を消す権利、忘れられる権利が与えられることは良いことだと思う。だけど一方で、その映像の配信で入っていたメーカーの収益は減ってしまう。

 元AV女優の鈴木涼美さんは自身のデビュー作のギャラは100万円だと話した。彼女のデビューは2004年。専属単体デビューの彼女は高額のギャラをもらっていた方だと思うけれど、それでも、当時は1本の撮影で数十万を手にするモデルがいた。

bunshun.jp

 

転職サイトDODAによると、20代女性の平均年収は319万円、月額で割ると、26万円。週5日勤務と考えて、20日で割ると1日あたり1万3000円。

doda.jp

 

同年代の人の一ヶ月分の収入か、それ以上の金額を1日で手にする。もちろん、それは、裸になるという心身の負担の大きい仕事をしているから、という理由もあるだろう。だけど、引退後も配信するなど、女優さんの意志よりも利益を優先させることで、利益を得て、AV業界全体が潤っていた。だから、利益を女優さんにも還元できた部分もあるように思う。

アメリカのAV業界は、出演者自身が契約書を交わし、契約にない行為は行わない。しかし、何十枚もの契約書を用意しなくてはならず、1本当たりのギャラも15万円と日本と比べ高くないと、週刊フラッシュのサイトに書いてあった。

smart-flash.jp

 

アメリカは契約社会なので、AV女優との契約もとにかく細かいですし厳格です。契約書は最低でも10枚以上ありますし、ID確認も複数の書類でおこないます。契約書に記載のない撮影がおこなわれることも絶対にありません」

 

「1本あたりの女優の出演ギャラは、日本円で15万円前後です。撮影は1日でメイク1時間、写真撮影1時間、本番撮影30分といった配分です。これを同じ日に数人分撮影します」

 

引退後の配信停止など、女優さんの意思を聞き、意見を尊重し、彼女たちを最優先にすればするほど、メーカーの利益は二の次、三の次になる。もちろん、それがビジネスの形として正しいのだけど、そうなれば、なるほど、同世代の平均よりも高額であった女優さんのギャラは、同年代の平均に近づいていくように思う。

 

◆商品扱いしないことのメリット・デメリット

イベントで、AV女優の神納花さんは、今は「いい意味でも、悪い意味でも女優を商品扱いしなくなった」と話していた。女優さんは事務所の商品だから、厳しいことも言うけれど、その分、口うるさく親身に女優さんのためになる助言もしてくれたんだと思う。

でも、今は、彼女の意志を最優先にするあまり、「AV女優は商品だから」と管理することもなくなった。女優さんのハラスメントにならないために気をつかうようになった。事務所が売れるためのレールを引いて、女の子は事務所の言うことを聞かざるを得なかったけれど、女の子自身が自分の意志ですべて決めなくてはいけなくなった。それは、出演強要など、本人の意思を無視した行為がなくなる一方で、AVに出る女の子自身が、自分で学び、考え、意見を言い、自立しなくてはいけないことになるかもしれない。

「あなたが自由に決めていいよ」はときに、悩ましいこともある。自分で決めることは自分に責任も返ってくる。自由である不自由。もしかして、今後の流れは、一部の女優さんにとって仕事がやりやすくなるけれど、一部の女優さん、だれかの指示をもらいながら働きたい女の子にとっては働きにくい業界になるかもしれないな。

 

追記。神納花さん本人を初めて見たのですが、すごく綺麗でドキドキした。何か話しかけたかったけど、話しかけられなかったのが残念。